高校生×大学生×職員が語るつどいの4日間
この夏、あしなが育英会は恒例の「高校奨学生のつどい」を開催しました。つどいは、高校奨学生が仲間との語らいを通して将来を考える宿泊行事です。今年は全国7会場で開かれ、578人が参加しました。
つどいでは、どんな出会いや経験があったのでしょうか。そしてその経験は、高校生たちにとってどんな意味を持つのでしょうか。
中国・四国地方9県の高校奨学生を対象に、愛媛県大洲市で開かれた「中四国のつどい」から1カ月。参加した高校2年生のアンさん、班のシニアリーダーを務めた大学4年生のミツハルさん、そして会場担当職員の島田が再会し、つどいの4日間を振り返りました。
<アン>
岡山県の離島に住む高校2年生。2025年、2026年と「中四国のつどい」に2年連続で参加。将来の夢は保育士になること。
<ミツハル>
今年のつどいで、アンさんの班のシニアリーダーを務めた。広島の大学で機械工学を学んでいる。あしなが学生募金事務局の中四国エリアマネージャーとしても活躍。現在大学4年生で、今回が最後のつどいだった。来年からは機械メーカーでエンジニアとして働く。
<島田北斗>
あしなが育英会職員。広報と中四国エリア担当を兼務。長崎出身で、あしなが奨学金を受けて高校、大学で学んだ卒業生。奨学生時代から数えて、高校奨学生のつどいには通算18回参加。
「何をするんだろう?」と思っていました
島田 1カ月ぶりの再会ですね。よろしくお願いします!
今日はつどいの写真をプリントして持ってきました。これを見ながら、3人でつどいを振り返ってみようと思います。
アン えー、懐かしい! もう1カ月ですか? 班のみんなにも見せたいです!
ミツハル うちの班は、今でもSNSでつながっているもんね。

写真を見ながらつどいを振り返る、アンさん(左)とミツハルさん
島田 アンさんは今年が2度目の参加でしたね。初めて参加した昨年のつどいは、どんな気持ちで参加したんですか?
アン 最初は正直、「何をするんだろう?」って思っていました。郵送されてきたパンフレットを読んでも、なかなか想像がつかなくて。でも、同じ境遇にいる人たちのことを知りたいなと思って、参加を決めました。
学校では、誰が自分と同じような経験をしているのか、なかなかわからないし、自分からは聞けないじゃないですか。つどいには、そういう仲間がいるかもしれない。心に抑えていることを話せるかもしれない、という気持ちがありました。
島田 実際に会場に着いて、どうでしたか?
アン すごく緊張しました。「楽しそう」という気持ちもあったけど、人が多くてドキドキしました。
島田 その緊張が解けたのは、どんなタイミングだったんですか?
アン 一緒に時間を過ごしていくうちに、少しずつ仲良くなりました。特に大きかったのは、班のみんなで過ごす「班タイム」です。プログラムの後だから、「さっきのあのプログラム、どうだった?」って話ができるんですよ。そこから話が弾んで、「みんないい人たちだな」って感じたんです。
初めて参加した2025年の中四国のつどいで、班の仲間と交流するアンさん(左)
話すことも、聞くことも。自分を知る時間に
島田 初参加だった昨年のつどいで、印象に残っていることはありますか?
アン 自分のこれまでを振り返って話す「マイライフストーリー」です。仲間の話を聞いて、「こんなにいろいろな人生があるんだ」と思いました。それぞれ頑張っていて、「自分もまだ頑張れるな」って勇気をもらいました。
でも、自分のことは話せなかったんです。みんなが詳しく話しているのを聞いて、気持ちがいっぱいになっちゃって。
ミツハル そうだったんだね。
アン でもそのあと、つどいで自分自身のことを考えるなかで、「自分と同じように、本音を話せない子どもの力になりたいんだ」と気づきました。一人ひとりの子どもと向き合える保育士になりたい。それを班のみんなに発表して、自分の中で目指したいものがはっきりしました。
島田 「保育士になりたい」という思いと、「どんな保育士になりたいのか」の両方が整理できたんですね。
アン はい! 夢が明確になりました!
少し先を歩く大学生が、背中を押してくれた
島田 つどいでは大学生スタッフも同じ班で過ごすけれど、アンさんにとって、どんな存在でしたか?
アン すごく心強い存在でした。言いにくいことも相談できるし、いてくれるだけで安心するんです。
ミツハル 少し照れるけど、うれしいな。
つどいでは、「この人なら言っても大丈夫」と思ってもらえるような安心感をつくれたらと思って、アンさんたちと接していたからさ。
アン 今年のつどいで、大学生のリーダーと話せたことは本当に大きかったです。実は、つどいに来る前、保育士になる夢を諦めかけていたんですよ。
ミツハル つどいの中で話していたね。
アン 去年のつどいの後、いろんな人に「保育士になる」っていう夢を話したんですけど、「保育士はしんどいから、やめたほうがいい」と言われることが続いて。応援してくれると思っていた人にも同じことを言われてしまい、そこから諦める理由ばかりを考えるようになりました。「もっと収入が高くて、安定した仕事のほうがいいのかな」とか。
島田 そんななかで参加した今年のつどいで、もう一度目指そうと思えたのは、何がきっかけだったんですか?
アン (ミツハルさんとは別の)私の班の大学生リーダーが、幼稚園の先生を目指して大学に通っている人だったんです。その人が夜に、「私も否定されたことがあるよ」と話してくれました。
そして、「やってみないとわからないし、やりたいと思ったら目指したらいい。私もそういう気持ちで目指している」って励ましてくれて。
それを聞いて、「やっぱりもう一度目指してみよう」という気持ちが戻ってきました。夢を聞かれると、「ない」って答えようとしても、やっぱり「保育士」が出てくるんです。「ああ、私は保育士になりたいんだな」って。

今年のつどいの「マイライフストーリー」で、班の仲間に夢を話すアンさん
島田 もし、つどいに参加していなかったら、今の自分はどう違っていたと思いますか?
アン 夢がはっきりしないまま、周りから言われたことを、そのままやっていたかもしれません。「自分はこうしたい」と思っていても、言わずに進んでいたんじゃないかな。
今は、それを言えるようになりました。
島田 なるほど、自分の未来を語れるようになったんですね。
ミツハルさんにとって、つどいに来た高校生たちは、どんな存在なんでしょうか?
ミツハル 「この子たちのために何かしたい」と思わせてくれる存在です。
自分の人生と真剣に向き合っている姿を見ると、応援したくなるんですよ。夢がなくてもいいから、とにかく幸せになってほしい。自分の人生を自分で生きていこうとしている姿が、輝いて見えるんです。

あなたにとって、つどいとは?
島田 アンさんにとって、つどいってどんなものですか?
アン 私の人生に「なくてはならないもの」と言えるぐらい、大切な存在です。
これまでの自分を振り返ることも、これからの自分について考えることも、人とのつながりも、すべて特別でした。つどいで学んだことは、これからの自分にも関わってくると思います。
班の仲間に「自分の人生はこうだったんだよ」と話して、相手の人生も知る。普段の生活ではなかなかないことでした。
ミツハル 「なくてはならないもの」と言ってもらえるのは、本当にうれしいな!
高校生のことを思って準備や運営をしたので、心からやっていてよかったと思います。

今年のつどい最終日の朝食。班の仲間と最後の食事を囲むアンさん(右)とミツハルさん(左から2番目)
島田 では、ミツハルさんにとってのつどいはどうですか?
ミツハル 僕にとっては、「父親がくれた最後のプレゼント」という感覚があります。
小さいころに父が亡くなって、つらい思いや苦しい思いもしてきました。でも、父が亡くなっていなかったら、これまでつどいで出会った人たちとは、出会っていなかったわけです。
父が家族のために働いてくれて、その後は母や学校の先生など、いろいろな人が思いをつないでくれた。そして、あしながが学びを支えてくれた。その先に、今こうしてつどいにいる自分がいるんだなと思うんです。
つどいがない大学生活は想像できないくらい、自分にとって大きなものでした。

ミツハルさん(中央)が、アンさんら自分の班の高校生たちに自身のライフストーリーを話す様子
アン 島田さんにとってのつどいはどうですか?
島田 僕にとって、つどいは「原点」ですかね。
僕も元奨学生なんですが、高校1年生のときに初めて九州のつどいに参加して、さまざまな経験をしながら頑張っている仲間と出会いました。仲間の話を聞いて、それこそアンさんと同じように、「自分も頑張らなきゃな」と思ったんだよね。
高校3年生のつどいでは、班の大学生スタッフに憧れて、「自分もこんな大学生になりたい」と思いました。それで大学進学を決意して、進学した後はミツハルさんのように、スタッフとしてつどいに参加してきました。
大学に進学した原点でもあるし、今の仕事を選んだ、ひいては自分の生き方を決めた原点でもあると思っています。
ミツハル つどいで人生が変わったんですね。
島田 まさにそうです。
今は職員として毎年つどいに携わっていますが、今の高校生たちにとってもつどいがその後の人生で「原点」と呼べる場所になったらいいなと思っています。
アン つどい、私の原点になりましたよ!
島田 それはうれしいな!

今年のつどい最終日、ミツハルさんら大学生スタッフに見送られ、アンさんら高校生を乗せたバスが会場を出発する
まだつどいに来たことがない仲間たちへ
島田 最後の質問になりますが、まだつどいに来たことがない高校生に勧めるとしたら、2人はどんな言葉をかけたいですか?
アン 私は、「自分の人生を振り返り整理できて、これからの自分が見えてくるよ」と伝えたいです。
島田 でも、「人生を整理できる」と言われても、最初はあまりぴんとこない人もいるかもしれないですね。
アン そうですね。私も初めて参加したつどいではぴんときませんでした。でも実際にプログラムをやってみて、人生を仲間と共有することが大事なんだと気づきました。言葉に出すから、自分の中でも整理できたんです。

ミツハル 僕からは、「もう一つの居場所をつくりに来ませんか」と伝えたいです。
島田 自宅でも学校でもない、サードプレイスってことでしょうか?
ミツハル そうです。だからこそ、話しやすいこともあると思うんです。最初から構えなくていいし、友達づくりが目的でもいい。本当に、軽い気持ちで来てほしいですね。
島田 一人ではなかなか考えられないことも、「この人とだったら話せる」という関係の中で、考えられることがある。普段は離れていても、同じ空の下で頑張っていて、何かあったら相談したり、励まし合ったりできる。そんな仲間ができるのも、つどいの魅力ですね。
アン 最初は、「楽しそうだな」くらいの気持ちでもいいと思います。軽い気持ちで来ていい。でも、行ってみるとすごく深いんです。だから、一度来てみてほしいです。自分の目と体で、確かめてみてほしいです。
ミツハル アンは来年も参加するの?
アン はい、もちろん!
島田 それじゃあ、来年また会場で会えるのを楽しみにしてますね!
お二人とも、今日はありがとうございました。














