学びの集大成を未来につなぐ| AAI生の卒業式を開催
この夏、「あしながアフリカ遺児高等教育支援100年構想*」(Ashinaga Africa Initiative:以下、AAI)の学生14名が、日本の大学を卒業しました。2026年8月25日、卒業を祝うとともに、これまでの学びを共有する卒業式を国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)で開催しました。
日本各地で学んだ仲間が集う
あしなが育英会が取り組むAAI事業は、サブサハラ・アフリカの遺児学生に高等教育の機会を提供し、将来、母国やアフリカの発展に貢献する次世代のリーダーを育成するプロジェクトです。
AAI生たちは、それぞれ日本各地の大学で学んできました。この日は各地から仲間が集い、タンザニアやセネガルの大使館関係者、起業家など多くの来賓に見守られながら、卒業という節目を迎えました。
開会式で関亨江理事が挨拶
「自分を支えてくれた人たちを忘れず、受け取ってきたものを次の世代へと渡してください」
あしながプロポーザルを発表
卒業式では、日本の大学で学んできた学生たちが、その経験を母国やコミュニティのためにどう生かすかという提案をまとめた「あしながプロポーザル」を発表しました。
これまで育んできた「志」を、これからどのように形にしていくのか。卒業式は、これまでの経験の集大成を披露するとともに、その実現に向けた決意を示す場となりました。
ここでは、2名の学生の発表をご紹介します。
持続可能な「生理の貧困」支援を届ける
叡啓大学でソーシャルシステムデザインを学んだカディディアトウさん
セネガル出身のカディディアトウさんのテーマは、「生理の貧困」。その原点は、自身が7年間を過ごした女子寄宿学校にあります。家族と離れて暮らす中、生理用品を手に入れることが難しく、話しにくい話題ゆえに助けを求めることもできませんでした。こうした経験をきっかけに、生理用品へのアクセスに関して「自分に何ができるのか」を考えるようになりました。

大学で学んだプロジェクト設計や多様な関係者との協働を、プロポーザルに生かした
生理の貧困をめぐっては、すでに多くの団体が支援に参入しています。カディディアトウさんは、今何が行われていて、何が足りないのかを解明するべく、母国セネガルに戻り調査しました。
そこで見えてきたのが、支援が届きにくい地域が残されていることと、生理用品を一度配るだけでは、翌月には再び同じ困難に直面してしまうことでした。そこで、彼女がたどり着いたのは、「生理用品を一時的に『届ける』のではなく、女性たちが自ら作れるようにする」という発想。その構想が実際に現地で成り立つのかを探るため、昨年、セネガルへ戻り、約30人を対象に再利用可能な生理用品を作るワークショップを実施しました。
日本での学業や研究と並行して、母国セネガルでプロジェクトを実践。
現地の声を聞きながら構想を形にしてきた
実践したからこそ、新たな課題も見えました。作り方を伝えるだけでは、材料の選び方や入手先が分からず、結局誰かの助けが必要になる。「どこでも、誰でもワークショップを再現できるようにしたい」という思いから、現在、現地で手に入る材料や調達先までまとめたガイドづくりを進めているとのことです。
来賓からは、実践を通じて具体的な改善点を見つけている点を評価する声があったほか、より多くの人にプロジェクトを届けるための方法についてもアドバイスが寄せられました。
子どもたちが武装勢力に取り込まれるのを防ぐ

「私の志は、人々が互いに争うことのない平和な国づくりに貢献すること」とエマニュエルさん
ブルキナファソ出身のエマニュエルさんのテーマは、ストリートチルドレンをめぐる問題です。ブルキナファソでは近年、武装勢力による襲撃など治安悪化が深刻な問題となっています。そうした中、路上で暮らす子どもたちが武装組織に取り込まれ、戦闘要員となるケースもあります。
彼がこの問題に取り組む背景には、自身の経験があります。母親を亡くした後、不安定な環境で暮らし、いつ路上生活になってもおかしくない日々を過ごしました。そして2019年、路上で物乞いをする少年と出会い、その境遇にかつての自分を重ねたことから、行動を起こしました。翌年には「Children’s Smile」という団体を設立し、これまでに約3,000人のストリートチルドレンを支援してきました。
「Children’s Smile」では物資支援やカウンセリングを提供してきた。
プロポーザルでは、さらに発展した支援の在り方を構想した
こうした活動を続けつつ、日本では立命館アジア太平洋大学で国際関係と平和学を学んだエマニュエルさん。大学での学びと現場で培った経験を生かし、ストリートチルドレンが武装勢力に取り込まれることを防ぐ、新たな支援の仕組みを構想しました。
現地で調査を行い見えてきたのは、子どもたちが路上生活に至る要因はさまざまで、中には家庭内の暴力から逃れてきた子どもも少なくないこと。単に家へ戻すだけでは、根本的な解決にはなりません。
そこでエマニュエルさんが考えたのが、自立まで寄り添う継続的なケアの仕組みです。子どもたちのいる場所まで出向き、信頼関係を築くところから始めます。そこで心のケアを通じて一人ひとりの状況を見極め、職業訓練や家庭への再統合など、その子に必要な支援を行います。それにより、子どもたちが安全に暮らし、人生を切り拓く力を身につけることを目指しています。
現地調査では子どもや警察、NGO関係者らに話を聞きデータを集めた
今後は試験的な運用も含め4年間かけて、この仕組みの実現を目指していると語るエマニュエルさん。発表に対して来賓は、地域に出向いて子どもたちと関係を築く支援のあり方を高く評価しました。
決意を宣言
閉会式では一人ひとりの名前が呼ばれ、卒業証書が授与されました。そして、リベリア出身のオーガスティンさんが AAI生を代表してスピーチ。
「あしながさんは、私たちのために扉を開いてくれました。皆さんに誇りに思っていただけるような存在になりたいです。いつか必ずアフリカへ戻り、私たちの後に続く若い世代を支えていきます」

真剣なまなざしで決意を語るオーガスティンさん
職員(写真右)から卒業証書と共に故・玉井前会長の書いた「志」の色紙が授与された
卒業後すぐにアフリカへ戻る学生、日本の企業で経験と知識を積む学生、大学院へ進み、さらに専門性を磨く学生。日本で得た学びや出会いを胸に、14人はそれぞれの道へと進みます。この日語った「志」を、これからどのような形で社会へつないでいくのか。その試行錯誤は、卒業後も続いていきます。
*「あしながアフリカ遺児高等教育支援100年構想」(Ashinaga Africa Initiative:AAI)とは、サブサハラ・アフリカ地域の49か国を対象に、優秀かつアフリカに貢献する志を持ちながらも、経済的に進学が困難な遺児学生を選抜し、世界の大学への留学やリーダーシップ育成の機会を提供する取り組みです。将来さまざまな分野で活躍し、アフリカの未来を担う若者を育てることを目指しています。

















